【論文メモ③】教育費スポンサーとしての保護者モデル再考

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 本日は「教育費スポンサー」としての保護者の性質に関する論文を考察します。

 

教育費という言葉を聞くと、受験料・入学料・授業料などの費用の「使われ方」に焦点が当てられがちですが、今回は教育費を投資する存在としての保護者に着目します。

 

◇理論的枠組み

 ・「如何なるリターンを期待し、獲得しようとするか」という観点から…

  1. 投資:金銭的利得(市場・社会的価値、訓練費用としての性格)
  2. 消費:精神的効用(世間からの目を意識)
  3. 贈与:精神的効用(人間関係に重点)の三つの理論と

・「誰の利益を追求するか」という観点から…

  1. 保護者志向:利己的意識→顕示的意識につながりうる
  2. 子ども志向:利他的意識→プロデューサー的意識が芽生えることも

 ・以上五つの観点をマトリクス的に配置し、保護者のスポンサーとしての意識の類型化を試みます。

◇調査方法

 ・公立高校在学生保護者・私立大学卒業生保護者の二系統のデータを使用

・教育費投入意識等を問う質問紙調査を行う(ただし、協力校の内一校から保護者学歴・職歴に関する質問を断られている)

 →論点がずれますが、括弧内の出来事は社会調査に対する学校側の意識の問題を示唆しています。詳しくは以下の記事をご覧下さい~

【教育政策の欠陥】全国学力テストの重大な問題点 - 思考を深める教育ブログ (hatenablog.com)

◇調査結果

 ・因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った結果、高校生保護者では「能力プロデューサー」「生前贈与」「必要経費」「見返り期待」が、大学生保護者では「能力プロデューサー」「収益性査定」「生前贈与」の因子が抽出された。

・大学生の方がスポンサー意識が高まっている

・スポンサー意識(自身の役割)に自覚的な保護者とそうでない保護者に分化している

・教育費を投入しないことによるネガティブリターンを回避する「保険」意識

・親年収・学歴とスポンサー意識の強さに関連?

◇まとめ

 ・保護者自身が高校・大学という場にどのような観点から、どのような価値を見出すかで具体的な教育費投入に差が生じるのだろうか?

・父親―母親という性差でスポンサー意識に差が生じるのか、またそれを解明できるか

・「リスク回避戦略」を具体的に問う設問を盛り込み、精査する必要があるかも

 

◇引用・参考文献

末冨芳(2005)「教育費スポンサーとしての保護者モデル再考―高校生・大学生保護者質問紙の分析から」『教育社会学研究』第77集、5-24頁。